いとう治療院ブログ

【鍼灸の戦略と症例】めまい

2013/3/16

  • 鍼灸の戦略と症例

30代 男性 会社員

【主訴】

めまい

【所見】

脉診:平脉に限りなく近いが、やや脉状が大きい。

背部:右背部(脊柱起立筋)が膨隆・硬化・緊張

腹部:季肋部に張りが少々(両方だがやや右が優位)

【処置】
肝実処置(長野式鍼灸)[肝実5点処置]:右復溜、右漏谷、右少海、右ゲキ門、右曲池 に雀啄補鍼

→脉状が浮いてくる(浮脉の要素が現れる)

椎骨動脈血流促進処置:委中、飛陽に硬結を解すように雀啄補鍼 崑崙に瀉鍼 → 天柱、風池の凝りに刺鍼

→脉状が安定する

2回目以降は、肝実処置から曲泉、陰谷、上四とくの刺鍼へ変更

【鍼灸戦略と考察】
来院された時期は「春」でした。臨床的に春は「めまい・ふらつき」を訴える人が多い傾向にあります。また、所見から察する五臓の異常は「肝」です。(※「肝」とは東洋医学における臓腑の概念。肝臓の機能も大まかにそこへ含まれる。私はT9T10椎骨レベルと関連する自律神経機能と考えている。)

お酒を良く飲まれる方で、ゴルフでの筋肉の疲労、さらに仕事上では精神的ストレスがあり、肝臓を疲労させる要素となります。所見より肝実と判断して「肝実処置」を実施。数脈ではありませんでしたが、起立筋の硬化や脉の触感から実系と判断。肝実5点とします。(※「肝実」とは「肝」の機能がオーバーワークの状態と理解してください。自律神経バランスで言うと、T9T10に関連する自律神経中枢[腹腔神経叢]において交感神経が優位になっているのではないでしょうか。)

頚部の運動によってめまいを発生させている所見もあります。これは「頚性めまい」を示唆しています。
椎骨動脈血流促進処置(通称:イ・ヒ・コン処置)は身体の背面(後頭部から踵に至るまで)全てを管轄する太陽膀胱経に対する処置と考えています。委中・飛陽・崑崙および天柱・風池の刺激により、このラインの流通を円滑にすることが可能です。頸部もこの流れに入りますので、頚部循環改善となります。このイ・ヒ・コン処置は著効すると、「後頚部から背中・腰に掛けて、水が流れるかの如くサラサラした心地よい感じが得られる」と長野潔先生は著書に書かれていたように思います。この表現が意味するところは、頭部・頸部の鬱血が解消していく感覚に近いのではないかと個人的に思っています。頭部・頸部の循環改善は「めまい」感改善の大きな要素だと思います。(64)

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