【鍼灸の戦略と症例】右背中の痛み
2013/4/8
- 鍼灸の戦略と症例
【患者情報】40代 男性 会社員
【主訴】 右背部痛
【現病歴】
慢性的に右背中が凝ってはいたが、最近(ここ数日)になって伸びをしたり、背中を丸める動作で痛みが出てきた。
【随伴症状】
目のかゆみ(おそらく花粉症と思う)、右の肋骨付近がたまに痛い
【所見】
座位でのバランス:ヤコビー線左下がり、帯脈穴の硬化、骨盤の捻れ(左寛骨後方回旋、右寛骨前方回旋)、右腰部の短縮緊張
背部:右背部一行線(T9、10が顕著)に硬化 やや右背部に深部の硬結
脉状:左関上、尺中の沈取して虚、肝の脉位に虚、やや遅脉
腹部:やや季肋部の張り(中カンから横に帯状の緊張)、右期門の圧痛少々
【処置】
経絡治療を主体に行う。
太谿、太衝に補鍼→腎兪、肝兪、膏肓に補鍼して灸→右T9華陀穴、右天宗、陽陵泉に瀉鍼
脊中に補鍼留鍼
サン竹に刺鍼
右缺盆に補鍼
帯脈の調整;帯脉の硬化を補鍼で除去
【治療戦略と考察】
所謂、肝虚である。
この方は以前に、腰痛の治療、消化器の治療を中心に行ったことがある。
腹証にある横に帯状の反応は慢性膵炎の示唆する可能性がある。今回は軽度であるが、消化器や脾に対する意識は怠らない。
肝は原則的に虚実が同居していると考え、肝虚であっても虚中の実になりやすく、容易に脾を害する。
脊中の留鍼は反応を加味しての刺鍼である。
右缺盆の虚、つまり深部の凝り・右背部の症状、右腰部の所見から右のインナーマッスルの問題と考える。
以前の腰痛はこの右インナーマッスル群の中心的存在である腸腰筋の緊張によるものであった。
今回の背部痛はそれよりも上部、横隔膜、斜角筋群の問題と考えた。
(※考察は継続して編集予定)
※記号161-1