【鍼灸の戦略と症例】坐骨神経痛(脊柱管狭窄症との診断)
2013/9/1
- 一般鍼灸
- 鍼灸の戦略と症例
30代 男性 デスクワーク
【主訴】
右下肢の痛み
【現病歴】
数ヶ月前に整形外科にて腰椎椎間板ヘルニアの診断を受ける。MRI画像より脊柱管狭窄症も同時に示唆され、手術の適用であることが伝えられた。手術の判断は患者に委ねられ、手術の回避を模索する中で鍼灸院へ来院する。
右下肢後面は、歩行を始めると最大でも15分以内に痛みが出現して休憩が必要になり、反対側の左下肢(下腿)には軽いしびれがある(長時間の立位も困難)。診断時と比べて現在は緩やかに悪化している。とは言え、歩行時以外には特別な問題があるとも言えない状況である。
【その他の情報】
・慢性的にダルさを伴う腰痛がある。
・先天性の心臓疾患を数年前に手術
・2ヶ月前に自転車で転倒。頚部痛は発生、腰痛は悪化。
・格闘技経験あり
【考察】
脊柱管狭窄症の典型的な症状である間欠性跛行がある。脊柱管狭窄症は鍼灸師にとって慎重に扱う必要のある病態である。また、症状が悪化していることは、やや進行性であることも示唆しており注意を要する。若さや筋力の強さが功を奏しているのだろうか、歩行以外の日常生活は問題が少ない。腰痛も下肢痛も他の症例と比較するとあまりない。本人も早急な手術療法は希望していないこと、その他の身体的な状況より、暫くは保存療法が行えると判断し鍼灸の適用と判断。施術を開始する。
(※間欠性跛行:歩行時に足の痛みにて歩行が中断するが、休憩するとまた歩行が再開できる。脊柱管狭窄症にて頻発する症候だが、下肢の血管炎でも発症するので鑑別など注意を要する。)
【鍼灸施術の戦略】
体表所見より右腰部深部に軟部組織(筋肉・靱帯など)の著しい硬化がある。この硬化の除去を右下肢の疼痛(間欠性跛行)改善の主な目標とした。しかし、仮に右腰部筋群の改善が見られても、脊柱管狭窄や椎間板ヘルニアなどの核心のどこまで迫れるかはまだ未知数である。また、このようなケースにおいて鍼灸師は、施術者としてだけではなく、アドバイザーとしての側面も重要だと思っている(本人にもそのように伝えている)。当院において症状への明確な判断・確実な施術効果が得られない場合は、できる限りの情報提供をした上で、適切な医療を受けられる環境へ導いていくことが必要だ。
初回の時点では、転倒事故や心臓の手術がyに腰部・下肢痛へそれほど大きな影響を与えているとは思えていない。
(2015.4月追記) この方は初回以降、週1回のペースにて鍼灸を受けられていた。施術後の症状の緩和こそあれ、根本的に治癒は至らず、数ヶ月後に手術を受けることとなった。(鍼灸施術には手術の2週間前まで症状緩和の為に実施)。その後、1年半経過した頃に再来院し、手術後には腰痛の主症状が消失している旨が報告された。現在は、腰部や頚部のその他の疲労に対して鍼灸を随時実施している。
(No.451)
腰痛の方々への的確なアプローチを大切に
はりきゅう いとう治療院@豊中市・吹田市