【頚肩腕症候群】 頚椎症性神経根症と鍼灸治療
2013/9/19
「頚椎症」とは、頚椎やその周囲の組織の変性による病態。頚椎の老化現象に伴いしばしば発生します。
「神経根症」とは、神経根部(神経が脊髄が出るあたり、頚椎の障害に巻き込まれやすい)の障害による病態。神経根に圧迫や刺激が加わり、浮腫や炎症が起きると考えられ、神経が繋がっている上肢や指先にまで痛みやしびれが出る。
頚椎の老化に伴いよく発生するこの病態は、「変形性脊椎症」とも言い換えられます。骨の変形の他、椎間板・靭帯・筋肉の変性が重なって起きます。老化によって自然と変形することが多いものです。中高年以降のロコモ(運動器疾患)に多い考え方です。
具体的な変形として、頚椎の骨棘(骨が微量の増殖したトゲ)、椎間板の膨隆・減少、後縦靭帯・そのたの靭帯の骨化などがあります。
注意すべきものとして、「神経根症」ではなく「脊髄症」の場合があります。頚椎症性脊髄症は四肢に運動麻痺が生じます。鍼灸院では不適応の症状です。
鍼灸の適用症状としては、
・上肢に痛みやしびれ(主として片側が多い)が出る「頚椎症性神経根症」
・頭痛、特に後頭部の痛みやピリピリとしたしびれ感がでる「後頭神経痛(頚性頭痛)」
・頚部・肩背部の鈍痛やコリ感。所謂「首こり・肩こり症」
・めまい、耳鳴り ⇒ 頚椎前面にある交感神経管が関係する「バレ・リュー症候群」や椎骨動脈との関連を示唆される「頚性めまい」
が、挙げられます。
神経根において前根刺激と後根刺激で症状に違いがある。後根刺激の場合は、デルマトームに一致した痛みやしびれ感(感覚鈍麻)が多く末梢の症状が優位である、前根刺激の場合は、その支配領域の運動障害、神経根麻痺、筋萎縮という筋肉の症状であることが多く、体幹に近い部分で起こりやすい。
この両者の区別を鍼灸治療で実際に応用することはほぼありませんが、違いを知ることで愁訴のイメージを持ちやすくなります。