【鍼灸と適応疾患】五十肩(四十肩)
2013/9/24
- 一般鍼灸
- 鍼灸と適応疾患
肩が上がらない!動かない!とてつもなく痛い!
「これが噂に聞いていた五十肩か・・・。年なのかな・・・。」
【鍼灸と適応疾患】 五十肩(四十肩)について
五十肩とは、
中年以降に多く生じる【肩関節の痛み】と【肩関節の動かしにくさ(拘縮)】が特徴の症状です。
肩関節周囲炎と呼ばれる事もあります。しかし、実態は単純な炎症ではなく、様々な症状を一辺に表現したもの。
言わば、”特に原因はないけど肩関節の周りが痛い症候群”という感じでしょうか。
名前の通り、40代から50代の方に多く発症しています。
痛みが減っても拘縮(動かしにくさ)が残ることが多いのが五十肩の特徴です。
初期は夜間の痛みが強く、時に首や腕へも痛みが波及することもあります。
また、一度症状が発生すると、中々治らないのも特徴です。
しかし、これには訳があります。
五十肩には以下のような病期が見られます。
1.疼痛期
軽い痛みと違和感が出始める。明らかな肩の動きの悪さを自覚し始める時期。
[症状:夜間痛・明け方の痛み・肩上腕のだるさ・手を後ろ(背中側に)回す時の痛み(結帯動作)]
→ とにかく痛い時期。痛みはあるが意外と何もしないで放置している方が多い。典型的にな五十肩になる人のパターンには、少々の症状は気合で何とかなると思うような気がする。
2.拘縮進行期
腕が上がりにくくなることを強く自覚するようになります(挙上制限)。五十肩の典型的な症状(→拘縮)に至るまでの時期。
[症状:安静にしていても痛む、肩・腕にだるさ・おもぐるしさ、夜間の痛み、肩を動かした時に起こる瞬間的な痛み『瞬時痛』が悪化していことを自覚]
→ 痛みに加えて動きまで悪くなります。日常生活にも支障をきたし始めます。そろそろ、真剣に対策を模索し始めます。
3.疼痛拘縮期
強い拘縮と強い疼痛が共存する時期で最も苦痛の強く感じる時期
[症状:動作時の強い瞬時痛(大)、動作後の残存痛(大)]
→ さすがにここまで来ると、治療行動に入ります。肩の痛みが生活の中心に来てしまっています。
4.疼痛拘縮分離期
疼痛が激減しているにも関わらず、動きの制限が依然として強い。疼痛が緩和傾向を示し始めてから、続いて運動制限が緩和傾向を示すまでの期間。
→ 「あれ!?痛みが減ってきたぞ。」「でも、まだ肩の動きがわるいんだなぁ・・・」という感じ。
5.緩解期
運動制限が急速に緩解し完治してしまう期間
→ 痛みもなく、動きも出てきました。本人さん視点では治ったと思うことでしょう。
鍼灸院において日常的に診療を行っている方の場合、
初期である(1)疼痛期に診ることもありますが、メンテナンスで通われている方ぐらいで、
初診で来られる場合の多くが(2)拘縮進行期(3)疼痛拘縮期です。
病院に行ったけどピンと来なかった。五十肩には鍼灸は良いと口コミで聞いたパターンで来院します。
鍼に若干の抵抗感があるものの、強烈な痛みと苦痛から決心した、という印象ですね。
比較的、中長期になる五十肩症状ではありますが、
(1)疼痛期に集中的に施術を行った場合、通常、3ヶ月から半年ほどかかるものでも、数回で結果が出ることがありますし
、逆に中長期に渡って治療を継続した際でも、症状は軽い状態を維持できているようです。
五十肩の治療は保存療法(手術ではない)が基本ですので鍼灸治療もその一端を担っています。
治療は【痛みの管理】・【肩の可動域の拡大】の二つが重要です。
初期は鎮痛が主体になり、徐々に運動療法を行ったり、自宅での指導(アイロン体操など)を行ったりします。
冷えが中心の症状でうので、肩関節の保温も大切です。
【五十肩の特徴】
・急性期には前方(烏口突起・腱板疎部・時に結節間溝)に圧痛が出現し、慢性化するにつれて後方四角腔での癒着や外旋時の運動痛を引き起こす。
・痛みの減少に可動域の改善は比例しない。
・年齢分布 50代に最も多い
・半年から一年の経過で自然治癒することがある
【三つの病因】
発生部位から三つの病因が考えられる。
・靭帯、筋、腱が骨に停止する部位で炎症が生じて疼痛が発生する(烏口突起炎・腱付着部炎など)
・腱の滑動機構の障害によるもの(肩峰下滑液包炎・上腕二頭筋長頭腱炎)
・筋や腱の間隙部での炎症や痛み
前:腱板間隙部:棘上筋腱・肩甲下筋腱が存在し、炎症が生じやすく強い圧痛が生じる部位。
:烏口上腕靭帯の作動部位と長頭腱の滑動部位の重なリ合う部位
後:後方四角腔:肩関節包・上腕三頭筋長頭・肩甲骨外縁・大円筋に囲まれた間隙で腋下神経、後上腕回旋動・静脈が通過する部位