いとう治療院ブログ

【鍼灸の戦略と症例】 右肩の痛み

2013/12/5

  • 鍼灸の戦略と症例

【患者情報】30代後半 男性 鍼灸師

【主訴】右肩の痛み
数日前から、右腕を挙げようとすると肩関節や上腕部(三角筋部)が痛む。このような状況は、しばしば起こる。特に、飲みすぎたり、食べ過ぎた後に起こることが多い。

【随伴症状】
冷えると腹痛(下痢)・右ひざの裏が張る 共に昨日より

肩が痛い男性のイラスト

肩の痛みへの鍼灸施術、戦略

【その他】
既往歴:乳幼児の時に、気管支喘息
家族歴:父親が糖尿病
自覚的な体の弱点:喉・気管支、消化器(便秘と下痢を繰り返す)

【所見】
肩:右肩関節の挙上・外転時に約80度で疼痛発生
バランス:右側腹部の強い張り、左肩(僧帽筋)の張り
脉状:緊脉
腹証:上腹部に緊張(中カンから両期門にかけての横一線の筋硬化)

【処置と戦略】
・膵臓意識した副腎処置(腎虚の処置)
糖代謝改善の処置
→ 照海 兪府 に20分の置鍼 →商丘に灸
→ T11・T12の横V字刺鍼

・扁桃処置
→ 尺沢 → 大腸兪 大椎 天ユウ

(※随伴症状や自覚的弱点、家族暦から判断すると、五臓では脾と肺の不調とみることができる。特に、膵臓への意識はとても重要である。糖尿病は膵臓の疾患であることは言うまでもなく、食べすぎで症状が出やすいこと、便秘と下痢を繰り返す人に対しては、膵臓を対象にした施術方針は上手くいくという印象がある。上腹部に表れた、横一線の硬化は「慢性膵炎様の腹(松本岐子先生、曰く)」と呼ばれ、長野潔先生は慢性膵炎の治療に「副腎処置」に商丘に灸を加えた処置を行っている。また、多くの筋肉の症状と糖代謝の問題は、密接な関係性がある。
扁桃処置は、基本処置でありながら、やはりこの方の情報から判断しても是非とも行いたい処置である。)

・骨盤の調整を中心とした、身体のバランス調整
・主訴;右肩関節に対する処置
→ 右足臨泣に瀉法 → 左後谿に補法
→ 帯脈穴への刺鍼
→ 右臑兪、臂臑の硬結の除去

(※上記の内科的な処置と対をなすのは、構造的な異常つまり歪みを是正する処置である。右肩の運動痛はその部分の固有の問題も当然見受けられるのでその処置は必要である。しかし、意外と腰や骨盤からの問題は軽視されがちである。このケースでは、右腹斜筋群の張りが右肩の動きを制限していると考えた。)

【考察】
施術当日の夜、右肩の症状が約9割無くなったとの報告を受ける。比較的、早期に改善がみられたのは、発症が数日前と新しい症状であるからである。もちろん、局所のみに目を奪われず、体内部の機能や歪みの調整をしっかり行ったことも良かったと自負している。
しかし、右肩の症状がしばしば起こる事実や、右の腹斜筋群の硬化が残存したこと(そもそも硬化が顕著)は施術

肩が痛い男性のイラスト

肩の痛みへの鍼灸施術、戦略

継続の重要性を示唆しており、症状の根っこをさらに取り続けることが大切であると考えます。

※記号 479-1