いとう治療院ブログ

鍼灸院における「価格」と「価値」を考える

2017/2/16

<この記事を読む所要時間(約3分半)>

最近、鍼灸院の価格について考える出来事が2件あった。

一つ目。

呼吸器の症状で数回にわたり鍼灸治療をし、「劇的に改善した」とお互いに認識し合った方から電話が掛かってきた。治療自体は一旦「卒業」としており、再発もしくは微量の兆候があれば再度実施することを確認して終わった。卒業と判定して2週間後の電話にて、まだ症状が「完治」してないと判断したその方は言った。

『まだ症状が取れないので、また通いたいと思います。でも、料金の事が心配なので健康保険は使えませんか?』

もちろん、当院では健康保険を取り扱った施術も実施しているので問題はない。ただし、呼吸器の症状は健康保険の取り扱い傷病には該当しない。その旨を伝えるととても残念がっていた。

”鍼灸治療に行きたいのに・・・。”

費用の面でのハードルがクリアできなかった。

二つ目。

飛び込みで問い合わせに来て下さった方がいた。この方も健康保険での鍼灸を希望していた。話の要旨はこうだ。近所の初回無料の鍼灸院へ治療に行ってきたが、2回目以降の料金(約5000円)が高価なので続けられる自信がない。当院は健康保険が使えると聞いたので手続きの質問をしたい。ちなみに先ほど行ってきたばかりなので、効果は良くわからないとのこと。

症状は頸部および頭部の慢性疼痛であるので、保険の傷病には該当している。従って、お決まりの保険説明を行った。かかりつけ医の存在有無・同意書取得の流れ・健康保険で受給できる額など・・・。一通り説明をした後、この方もがっかりすることとなる。満額(自費治療費*当院ならば3000~4000円)に対しての3割負担ではないと知ったのだ。また、同意書取得へのハードルが比較的高いことも認識された。

二人目の方は、ちょっと心が動く部分があった。それは、一件目の鍼灸院は高くて続けられないのであって、鍼灸自体は評価もしくは期待感があるということだ。もちろん、一件目の鍼灸院の技術や説明が秀逸であったので、このような感覚を得たのか知れないが、「もう鍼灸はダメだ!」とは判断しなかったのである。

さて、一人目の方は当院の4000円/1回(当院の月1回~2回ペース)、二人目の方は約5000円にそれぞれ抵抗を示した訳だが、鍼灸院を運営している側、および私自身が鍼灸愛好家として通院している者としては、この額面にはもうほとんど違和感がなくなっている。だが、実際に市場のユーザーの目線は厳しい。強く実感した。

所得の高い人向けの医療が鍼灸治療なのであろうか?実際にそのような側面は否めないが、私自身正直に言って決して所得が高い訳ではないし、当院に来られている方でも苦労して捻出している方々がいるのは知っている。

要は、”価格に対してどれだけ価値を感じるか”なのであろう。手前味噌を並べることになるが、当院の価格設定を安いという方は少なくない。事実、一律4000円であった価格を希望者のみ6000円へのアップグレードするという価格設定を行った経緯もある。

これは想像であるが、先の一人目の方は数回で完治すると想定していたので、数回の額(合計10000円程度)は我慢できた。しかし、先の見えない支払いには抵抗感がある。また、二人目の方は、そもそも自分に効果があるのかわからない世界に大金を投じることはできない。と思ったのではないだろうか。

4000円を安いと言ってくださる方は、当院のユニーク性や専門性への価値および施術効果への評価があるのは事実であろう。もしかすると彼らは、使えるお金にも余裕があるのかもしれない。価値を感じることができるから、支払いに抵抗がなくなる。逆に価値がわからないから、抵抗感が生じてくると思われる。

鍼灸院の価格を高いと感じる方々には、どのような価値が存在するのかを、我々鍼灸師および運営者が丁寧に伝えていく必要があると思った。

全国民の鍼灸受療率は約6%と言われている。残り94%の方々には上手く価値が伝わっていないのかもしれない。鍼灸院は口コミによってしか運営し続けるのは困難と、言われていた時代があった。インターネットが普及した現在では、それは薄れつつあるのかもしれない。しかし、今まさに口コミのよって、悩める方々を鍼灸院へ導いてくれている方々がたくさんおられます。本当に頭が下がります。感謝。

(著者:伊藤圭人)

鍼灸師がもっともっと価値を伝えていかなければ

はりきゅういとう治療院@緑地公園